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メジロ繁殖レポート 松山主任に聞く (3/3)

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――生産頭数を30〜35頭として繁殖牝馬は何頭いるのですか

松山主任  繁殖牝馬は45頭くらいですね。今後の方向性としては繁殖牝馬の全体頭数を少し絞って、生産頭数は35頭まで行かないように30頭あたりを目標として行きたいと考えています。メジロライアンが走ったときの生産頭数は20頭〜25頭だったわけですから、それから思えば今は10頭近く増えていると言えますからね。牧場面積は変わっていないので過密になっていると思います。

――20頭に絞ったとしても、今ぐらい勝てる保障はありませんから、難しいですね

 そうですね、逆に今以上に勝たなければならなくなります。大雑把に言って、牧場の維持費自体は変わらないので、競走馬の頭数が3分の2になるのであれば、勝ち馬率や1頭当たりの獲得賞金を1.5倍にする必要があります。そのためにはやっぱり率を稼いでいく必要があるので、生産というリスクをどう見るかでしょうね。頭数として30頭をキープしたいのなら、20頭を自家生産して10頭を買うというのも一つの手だと思います。特に今は買い手市場になっていますから。ただ、いい馬は取り合いになってしまうので当然高くなってしまいますから難しいですね。

――それと、ここ2、3年で繁殖の入れ替えを定期的にやっていますが

 はい、今までは50数頭の繁殖牝馬がいたので、それで先ほど言ったような30頭の生産となると半分遊んでしまいます。ただ、メジロ牧場の場合、年をとっても生まれてくる仔どもの骨量とかが落ちないように、数年に1回空胎を挟むというやり方があったので、繁殖寿命を優先して考える分にはそれでも良かったわけです。
 ただ、その分、繁殖牝馬のサイクルが長くなってしまって、繁殖牝馬の頭数がジワジワと増えてしまいました。ですから、このままだと血統の更新も遅れてしまうだけなので、ちょっと頭数を減らして、更にサイクルも早めるために定期的に繁殖牝馬を入れ替えていきたいと思っていました。


しばらくすれば、競走馬になるための育成が始まります。

――繁殖を入れる基準というのはありますか

 当たり前の話ですが、馬体・成績・血統の良いもの・使いやすい馬を優先しています。自家生産馬だけでは血が偏ってしまうので、選択肢がたくさんあればいいのですが、よそ様のあの繁殖牝馬くださいといっても無理なので、こういう繁殖牝馬を出しますよという情報があってから、何を選ぶかという話になるので選ぶのは難しいですね。選択肢は多いほうがいいですが、その中でいいのを選んで残していけば、おのずと勝率も上がってくると考えています。

――競走馬の中から繁殖牝馬を選ぶのは大変ではないですか

 それこそ出たとこ勝負ですね。未勝利からいい繁殖牝馬が出ることもありますが、勝っている、競走成績のある繁殖牝馬から実績を出さないとダメですね。これも牧場の課題です。

――松山さんが繁殖に来てから、イチからやった世代というのは今年の2歳馬になりますか

 本当にイチからやったとなると、配合から考えた馬が多い今年の当歳になりますね。今の1歳が生まれる前くらいから繁殖に入ったので、生まれてからは一応全部みています。まるまる全部みたという意味では今年生まれたのがはじめてです。

――メジロドーベルの血を引く繁殖が増えていますが、松山さんの中で区別して配合を考えているというのはありますか

 今のところは3頭いますが、馬体はまるっきり別物です。エルコンドルパサー産駒のメジロヒラリーは父親母親どちらにも全く似ていないので、ライアンを少し太くしたような感じです。ミスプロが強く出たのか分かりませんが、ドーベルの産駒という捉え方はしていないですね。ヒラリー産駒は極端に脚元が硬く出てしまうので、配合相手は脚元が柔らかい種牡馬を付けたいと考えています。

――妹のメジロルルドはどうですか

 ルルドはサンデーサイレンスの肌らしい繁殖なので、いい意味でドーベルらしくないですね。親も兄弟も含めて一番いい子供を出すと思います。牧場の繁殖の中でも1、2の良さだと思います。

――母のドーベルよりも上だと

 上だと思いますね。仔出しを見ると、ドーベルのように必要以上にゴツゴツしていないですし、サンデー的なバネも感じられますし、サンデーサイレンスという源泉に近いのは良い事だと思います。子育てもルルドの方が上手です。やや可愛がりすぎる傾向はありますが。
 欠点はサンデーの肌になるので配合の幅が狭くなってしまうことですが、血統的に高額種牡馬も安心して付けられますし、サンデー的な部分も産駒に伝わっているようなので、それほど心配していません。

――2歳のアグネスデジタルの牡馬(メジロクリントン)を育成で見てきたのですが、かなりしっかりしていましたね

 そうですね。逆にゴツく出過ぎたかなという感じもしています。それでも父親の傾向もちゃんと出ているし、皮膚も薄くて、その分柔らかみも出ているので、サンデーの繁殖牝馬らしい仔出しをしていますね。

――ルルドは繁殖として楽しみですね。メジロラモーヌの系統でメジロフラックスの産駒はどうですか

 好みを言っては駄目なのでしょうが、馬には好みが付きものなので・・・、フラックスは基本的に好きではないですね。好みかとは思いますが、産駒に目の深さがないところなんかが。ただ、運動能力は高いらしいので、育成では乗ってみて、すごくいいという話が多いですね。体がよくても気性が競馬に向かないような目をしているので余り好きじゃありません。
 父アグネスタキオンの産駒(メジロフィーバー)も別の理由はありますが、今のところ全く動いていませんね(※メジロフィーバーは7月27日付け登録抹消)。

――今年はフラックスには何を付けましたか

 ベイリーを付けていますね。

――ベイリーを付けてどう出るかですね

 フラックスの産駒は小さいときに必ずケガをしてしまいます。自分が見えなくなるとでもいうか、どうしてかはわかりませんが、フィーバーも顔を20数針縫っていますし、次の二コールも柱に顔をぶつけました。今年の産駒は小パドックが多いので今のところは何もありませんが、健康とも言い難いです。

――1歳は父がジャングルポケットですが、メジロ牧場では種牡馬として結果が出ていませんね

 うちの繁殖牝馬だとジャングルポケットって、いい形の産駒が出づらい感じがします。ジャングルポケットは種牡馬としてこれから走ってくると思っていますが、うちの繁殖牝馬につけると、世間一般の傾向と違う産駒が出てしまうことが結構あるので、そういうあくの強さみたいなのは繁殖全体にありますね。フラックスの仔に関して言えば、抱き(前脚の幅)が非常に広くて、ブルドックみたいな肢勢をしています。意外とダート向きかも知れません。

――サンデーサイレンスも全くダメでしたね

 逆にそういう傾向がないのが、ルルドなどの新しい世代の繁殖だと思います。新しい世代には、距離適性や能力など、統計どおりの成績を期待しています。

――そういった意味で期待している繁殖牝馬をあげるとすると何でしょうか

 自分としてはメジロダーリングですね。ダーリングでなんとかしたいという気持ちはありますが、年をとってきましたし、この先を考えると難しいかなと思っています。だから、父メジロライアン(メジロカトリーヌ)にはズバっと勝って欲しかったのですが。

――実際にメジロカトリーヌのデビュー戦を見にいきましたが、パドックで何かに驚いたのか端から端まで飛び跳ねるようなことがあって、まともに競馬ができませんでしたね

 恥ずかしながら、たまにうちの馬にありますよね、パドック回れなかったとか・・・、最近はなくなったので、幼さゆえの過ちで、持っている能力はオープン級だと信じたいです。

――ダーリングにはなんとかいい仔どもを出してほしいのですが、ダーリングにはどんな種牡馬が向いていると考えていますか

 ダーリングも難しいのですが、やっぱり短いところがいいと思っています。何を付けても若干硬くなってしまうので、今年のディープインパクトの仔どもは結構、ダーリングの仔どもの中では手先とか柔らかめに出ました。これが当たっているのかどうかは、仔どもが大きくなってみないと分かりませんね。とりあえず、今年は空胎なので、次は短いところからでも動けて、中距離まで持つような種牡馬で柔らか味のあるのを選ぼうかなと思っています。
 例えば、ダイワメジャーとかはサンデー系で比較的短いところから動けますからね。その実験的な意味を込めて、娘のメジロアダーラに今年ダイワメジャーを付けているわけです。

――1歳の父キングカメハメハあたりも距離的には似たタイプですが

 キングカメハメは少し違って硬さが前に出るような感じがあります。父がメジロライアンのメジロカトリーヌでも他と比べると生まれたときから手先が硬かったので、走るとしたら短いところになるなと思っていました。だから距離がもつとしたらキングカメハメハ自身のようなタイプになるのかなと思っていました。折り合いのつく気性なら、ある程度距離の融通はきいてくれると思いますが、ダーリングの仔どもにはパーッと前に行って粘るタイプが多いので、どう出るのかなと思っています。キングカメハメハ産駒でも前に行ってしまったら、中距離以上は苦しいでしょうし、そうなってしまったらダーリングの産駒はみんな短いところに出ると割り切ります。

――アリエルは前に行くタイプですね

 だから、ああいう仔どもが多くなるなら、やっぱり短い種牡馬ほうがいいのか、それとも短いところの種牡馬を付けているから、ああなっているのか見極める必要がありますね。

――カトリーヌはメジロライアン産駒ですが、松山さんは種牡馬としてのライアンをどのように評価していましたか

 メジロ牧場としてライアンはものすごく安定していましたね。誰がみてもライアンらしいという産駒を一杯出してくれましたから、うちには合っている種牡馬だったと思います。でも、逆に日高とかのセリに行ってライアンの仔どもを見ると、なんかうちのとは違うなっていうのが目立ってくるので、それも面白いなと思っていました。
 だから、母系が一緒だから、配合的に何が良かったというわけではないのですが、牧場の繁殖牝馬にとって、いい繋ぎになる部分が多かったのかなと思いました。自家生産馬には、そういったメリットがあると思います。
 カトリーヌに関して言えば、配合を考えている時期に、ライアンの年齢について考えていました。ライアンもあと何年種牡馬を続けられるか分からなかったので、このあたりで実績のある繁殖牝馬を中心に配合しておいた方がいいと思い、その相手としてサンドラとダーリングに決めました。最初の配合案では社台系の良血牝馬を購入してでも・・・という感じの方向性だったのですが、現実的な線に落ち着きました。結局、次の年に受胎率低下で種馬引退となったのでギリギリのタイミングでしたから、余計にこの2頭には頑張ってほしいと思います。

――そうなるとライアンの肌が注目されますが、ドーベルのほかはどうですか

 メジロルバート、メジロジョーンズ、メジロシルエット、メジロプレスト、メジロベイシンガーがいます。特にプレストはライアンというよりは母のレールデュタンらしいので、いかにもブライトを出した母系だなっていうのがありますね。何を付けても大体スラッと長いのが出ますし、芝の長いところでいい仔どもを出せると思います。

――プレストの初仔はシンボリクリスエス産駒ですが

 いかにもシンボリクリスエスという産駒が出ましたね。長いところを使えそうな感じです。今年生まれたアフリートの産駒もそうですし、線が細くて、ガチガチのダート馬じゃないなって感じがしますね。今年はジャングルポケットを付けているので、これは結果を出して欲しいですね。
 メジログラフの父トニービンでメジロフリーマンがいましたが、フリーマンがいい走りをしたのでメジロリンデンにエアジハード付けました。そういう経緯もあったのですが、勝つには勝ちましたが産駒の傾向は違いましたね。

――メジロシルエットはどうですか

 シルエットはライアンの肌としては線の細いところがあるので、仔どももそんな感じで薄めのつくりで出ています。

――メジロランバダはどうなのでしょうか

 もう年ですから、難しいと思います。売るわけじゃないので、年齢の高い繁殖牝馬に、いい種牡馬を付けたとしても、どんどんリスクが高まってくだけだと考えています。最近は高齢でも重賞クラスの走る馬を出している繁殖牝馬もいますが、何百頭といる中での数頭ですから、統計的にみたら年をとるにつれてどんどん成績は下がっていると思います。
 それに受胎率とかも目に見えて落ちているので、それに種付料の高いディープインパクトなどを付けて不受胎で終わったらもったいないですからね。だから、そういう時こそベイリーとかの出番だと考えています。

――今年はランバダに何を付けましたか

 アグネスデジタルを付けましたが不受胎でした。ですから、この年齢になるとなかなか難しいですね。特にランバダの場合は出生時の仔が大きく、産後のダメージが大きいのも影響しています。一番大きい時は70キロの仔が産まれました。ウチの平均が53キロなので過大児と言って良いと思います。

―― 一方で最近メジロビクトリアの繁殖成績が良いですが、最初から期待されていましたか

 やはり勝ち星が多くて成績だけでみたら牧場の牝馬では上位になるので、成績に見合った仔どもを出してもらいたいと期待していました。高い種牡馬も付けやすいですし、若ければ尚更です。

――育成のほうでも産駒の評判が良かったメジロリンデンはどうでしょうか

 リンデンは血統的に何も入ってない、ノーザンダンサーも入っていないし、サンデーも何も入ってないので、これを有効に使いたくてこれまで意図的にバラバラに付けていました。だから、メジロヴィーヴォ(父メジロライアン)とかメジロレスート(父ジャングルポケット)が成績を上げてくれたら、繁殖として使いやすかったわけですが。あのあたりが実績を残せず、年齢を重ねてしまったので、最近は評価が落ちてきましたね。ただ、今年のサクラバクシンオー産駒はかなり良い出来です。気性的に扱いづらいところがあって、それがレースに向かない部分もありましたね。

――メジロフローラ、メジロベンハーと勝ち星を上げていますし、まだまだ繁殖として楽しみですよね

 この2頭は自分の配合が採用された産駒で、エアジハードは先ほど話したメジロフリーマンの配合からなので、安いからたぶん実現するだろうと思って提案したら、うまく採用されました。そこからなんとかスペシャルウィークの流れにもっていって、次の年には種付料は安くなりましたが、スウェプトオーヴァーボードを付けることができました。
 リンデンの配合については意図的にサンデー系を避けた部分があったので、いい後継繁殖牝馬ができたらいいなと思っています。恐らくリンデンの仔どもの世代なら、サンデー系が血統に入ってないのは配合上のメリットになるはずです。

――そういった先のことも考えて配合を考えているわけですね

 そうですね。次のステップを考えながらやっているので、今年の4歳世代は成績が悪かったですが、繁殖に残したいという牝馬は結構います。先ほど話したメジロアリスもそうですね。今は1勝馬が横並びの状態なので、アリスには確実に2勝してもらわないと成績的には繁殖には残しづらいですね。できれば繁殖牝馬として使いたいなと思っていますが、成績が思ったほど上がらなかったら仕方がないのかなと思っています。来春どうなるかですね。

――アリスならこれから1つ2つくらい勝ってくれそうですが

 先ほどの話にあったカロのインブリードを産駒の代に生かしたいと思っているので、繁殖牝馬になれるよう頑張って欲しいですね。


真っ白なメジロサンドラとストラヴィンスキーの当歳。

――メジロサンドラはどうでしょうか

 メジロマックイーンの肌ですし、期待している繁殖牝馬ですね。ちょっと老け込みが早いのが心配です。競走生活が長かったせいか、2番仔を生んでからは急に年を取りましたね。

――1歳は父ステイゴールドですね

 昨年生まれた牝馬の中では、結構上のほうですね。バネもあるし、ステイゴールドらしいですね。メジロマリアンも生まれたときから目立って良い馬だったので、もっと早めに勝つと思ったのですが。マリアンがあそこまでだと、ひょっとしたら他もちょっとズブいところあるのかなという気がしてきたところです。でも、この馬は放牧地での動きも良かったし、すごく安定していますね。配合的にはドリームジャーニーのパクリです。安易ですが少しでも確率を上げたいと思ってワラにすがりました。ただ、最近サドラー肌のステイゴールドも動いており、後付け的ではありますが、サンドラとの相性の良さを予感させます。

――今年はサンドラには何を付けましたか

今年は出産が遅かったので、種付けしていません。今年はメジロジョーンズを別にすると、サンドラが最後の出産でしたから、最初から予定なしです。

――先日未勝利を勝ったメジロホリデイは父のフレンチデピュティが出ているのか、それとも母のドリームホリデーなのか、育成でみてきた半弟のメジロフランクリンも姉に似てかなりガッチリしていましたが

 両方でしょうね。ドリームホリデーはトニービンっていえば、トニービンですよね。どちらかというと不器用そうに見えるような産駒が多いので、生まれてすぐ良いとは言いづらい馬ではありましたね。

――種牡馬選びの際に松山さんとしては兄姉が活躍したから同じ種牡馬を付けるということはありますか

 何かハッキリとした理由があるのであれば、そうしたほうがいいですし、そうしていきますが、最近は去年と同じとか全兄弟は少ないと思います。コロンバイトが目立つくらいですかね。余程年をとっていないと、同じ種牡馬を2回は付けることはありません。

――コロンバイトには2年連続でアグネスタキオンを付けていましたね

 これは基本的にお金を使っている繁殖ということもありますが、生まれてきた産駒の形が良かったこともあって、スペシャルウィークも間を挟んで2回付けています。
 父がフレンチデピュティのメジロアニマートに今年スペシャルウィークを付けたのでこちらも楽しみにしています。メジロポラリス(父スペシャルウィーク)は走りませんでしたが、クラブフットだったので、これがなかったら走っていたと思っています。ですから、アニマートにスペシャルウィークを付けて、そういう形が出てくれることを期待しています。
 アニマートもガチガチのフレンチデピュティっぽい形ではないのでいい繁殖牝馬だと思っています。ガチガチなフレンチの肌だったら、どのみちサンデー系を付けるしかないですしね。社台の配合をみても、フレンチの肌にはサンデー系のどれかって具合にほぼ決まっているようにみえますしね。

――話はつきませんが、本日はお忙しいところ、インタビューありがとうございました。

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あとがき
 メジロ牧場にお伺いした際に、いつも松山主任とは、いろいろとお話をさせていただいていたのですが、今回は事前にしっかりお伺いしますと予告をして行ったわりには、管理人が思いのほか準備不足で主任にはご迷惑をおかけしました。また、このインタビュー記事を読んでの感想や今後の特集への要望などがありましたら、ぜひ掲示板やブログに書き込みをお願いします。(管理人 ジリ)

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