10周年記念スペシャルインタビュー

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はじめに

 去る8月27日にメジロ牧場において岩崎伸道専務のご厚意により、これからのメジロについていろいろとお話を伺うことができました。つきましてはその内容をメジロ通信10周年記念企画としてご紹介させていただきます。不慣れな自分に気を使っていただいたのか、インタビューというよりは専務のお話をただ聞くような感じになってしまったことをこの場をお借りしてお詫びするとともに、こころよく迎えていただいた岩崎専務をはじめとするメジロ牧場の皆さまに改めてお礼申し上げます。 管理人ジリ

メジロ牧場 岩崎専務ロングインタビュー(1)

メジロラモーヌの大きな写真と並ぶ岩崎伸道専務

――本日はお忙しい中、このような時間をいただきありがとうございます

岩崎専務(以下敬称略) こちらこそ最近はみなさんの期待に応えられず申し訳なく思っています。

――土曜日(8月25日)はアースラがクローバー賞で5着と残念な結果に終わりましたが、直線だけの競馬で5着と今後が非常に楽しみな内容でした

岩崎 ジョッキーも、この馬走りますね、次も乗せて下さいと言ってたみたいですよ。

今年の2歳は勝ち星を上げているアースラやアリスをはじめとして楽しみな馬が多いですが、今の3歳と何か変えたところがあったんでしょうか。

岩崎 昨年の夏から若い4人を厩舎長に抜擢したんです。というのも、ここ1〜2年停滞して、若い人達のモチベーションをもっと上げていくには、何か流れを変えなければならなかったんです。今までと同じことをやっててダメだったんだから、若い人が思ったこと、考えたことを失敗してもいいから、思い切ってやってみろって。失敗してもその中から何かを見つけられればいい。BTCもそのひとつなんです。

――その成果が今の2歳の成績につながっているわけですね

岩崎 それにただ調教方法や管理方法が一新されただけでなくて、厩舎長という責任を持たせたことで若い人たちがすごいやる気がでてきています。春に育成馬担当の厩舎長をトレセンに連れて行って調教師の先生たちに挨拶して回って、名刺を渡して携帯の番号も伝えて連絡取り合うことができるようにした。調教師の先生からも今年の2歳はいいよって言われて、ホント今若い人たちは手応えを感じていますよ。

――例えばどこが良くなったって話がありましたか

岩崎 馬の仕上がりはもちろんだけど、ゲートがすごく良くなったって言われましたね。今の3歳は、アルタイスもそうだけど、ゲートが悪いのが多かった。

――具体的に何か変えたんですか

岩崎 これまでは冬は雪があるからゲート練習ができず、春になってからやっていた。ノーザンみたいに屋内馬場はないからね。それじゃダメだからって、屋内にゲートを置いて冬でもゲートをくぐらせたりしてゲートに慣れさせるようにしたんです。ゲートがいいってことはゲート試験を早めにパスできて、すぐデビューできるわけだからね。

――ちょっとした工夫で変わるもんなんですね

岩崎 本当に若い人の力で牧場は変わってきている。でもこうなるのが遅すぎた。これは私の責任だと思ってます。

――いえ、これからのメジロ牧場がすごい楽しみです。来年は今年以上に期待させていただきます

岩崎 実は1歳の馬名をこれからの新しいメジロ牧場にふさわしいものにと、マック、ライアン、パーマーを考えてくれた人に依頼して、快諾してもらったんですよ。まだ正式ではないけど、テーマはアメリカハリウッドの映画だそうです。まだ当歳がいるけど、マックイーンの産駒も最後だからって、マックイーン産駒はスティーブ・マックイーンの主演作から名前を取ったそうです。
 あと映画「シェーン」でシェーンが最後にいう言葉「カムバック」をドーベルの孫につけて、昔の「カムバック戻ってこーい」ってのがやりたいって言うから、それでいいんじゃないかなって。

――マックイーン産駒はパピオン、ブリット、ルマンで、カムバックはヒラリーの産駒で父はアグネスタキオンですか。来年も楽しみですね

岩崎 それにベイリー産駒のデビューの年ですしね。

――そういえば、メジロ牧場ではベイリーを結構多くつけているようですが

岩崎 とりあえずデビューするまで毎年6頭つけています。青森だとそれなりの繁殖が少なくて中央に行く確率が低い。うちがある程度の馬を持って行って付けないと中央でデビューする馬は少ないんですよ。
 このあいだの青森のセリでJRAはどうしてベイリー競らないのって知っている人に聞いたら、本当か嘘かわかりませんが、基本的にJRAは30万円以下の種付料の馬は競らないそうですよ。JRAが買ってくれれば中央に行くのも間違いなかったんだけどね。
 これじゃ少ないからって、今の1歳で早そうなところを函館の最初で使って1頭か2頭新馬勝ちしてくれれば、そのあとにある八戸のセリでちょっとはいいかなって話をしています。

――最近は最初の1、2年で結果を出さないと種牡馬は苦しいですからね

岩崎 本当に3年目までは待ってくれませんから。

――ライアンのように初年度から活躍して欲しいですね。ライアンといえば、先日函館でお披露目があり、素晴らしい走りを見せてくれましたが

岩崎 本当にね、馬が全然20歳には見えない。結構速い上がりでゴール板通過したからね。ライアンファンの人は15、6年前にタイムスリップしたんじゃないかな(笑)ノリもびっくりしてたよ。

――横山騎手は最近こういったことでしかメジロの勝負服を着てくれないので、できればもっとメジロの馬に乗って欲しいんですけど(笑)

岩崎 実は今年2月に奥平先生の定年記念のゴルフコンペがあったんですよ。たまたまノリと私が一緒にまわってて、ノリにたぶんライアンは去年受胎率が低かったから、もう抹消して余生をうちで送らせるから、近くて安心だからって函館競馬場にライアン連れてくって打ち合わせしているんだよって話したら、ノリがじゃーオレが乗るよって話になって、それはファンも大喜びだよって話になったんです。
 ただパーマーやマックーインと同じで宝塚記念の日を予定してたんですが、その日にノリが函館ってわけにいかないから、乗るんだったら日にちをずらせるか話してみるよってことになったんです。それでそのことを函館の業務課長に話をしたら、それは全然問題ないし、乗るんだったらそういう方向で話すすめましょうってことになった。そして夏競馬が始まって、JRAからの依頼にノリも乗りますよって言ってくれたら、それじゃってうちが7月4日にアロースタッドまで迎えにいって、ライアンが牧場に戻ってきたんです。そしたらライアンのたてがみが普通に伸びているんですよ。

――たてがみは牧場に戻ってからそろえたんですか

岩崎 ええ、8月5日まで約1ヶ月あったじゃないですか、たてがみも少しずつそろえていって、ある程度走れるように乗馬訓練をして、ちゃんとして競馬場にもっていこうって話になったんです。JRAでも当日の日曜の朝に連れてきても興奮してしまうから、スクーリングしようって話になったんですよ。3日の金曜日に検疫に入れて、無事検疫が終わってから夕方にノリが乗ってスクーリングをしたんです。

――スクーリングのことは新聞に載っていましたね

岩崎 そうそう。日曜日本番、雨だったのが残念だったけど、あの走りでライアンファンは喜んでくれたみたいだしね。

メジロ牧場で悠々自適の生活を送るメジロライアン

――本当は自分も行きたかったんですよね

岩崎 来たかった人はたくさんいたそうですよ。

――牧場に戻ってから乗り始めたそうですが、種牡馬を引退したばかりで大変だったんじゃないですか。

岩崎 アロースタッドでも鞍をつけて乗っていたこともあったから、そんなに苦労はなかったですよ。最初はずっと腹を膨らませてふぅーってやってたけど、乗ることについては全然問題なかった。でも面白かったのは、競馬場のパドックでは種牡馬のつもりでまわってたけど、これがノリが乗って本馬場入ったら、やっぱり競走馬の感覚になるんですね。種牡馬だったことを全然忘れて、もう走ることに夢中になるです。ああいうとこはね、よく人間でもあるじゃないですか、今年やったジョッキーマスターズじゃないけれど現役時代になりきっちゃうのと同じように、馬も自分が競走馬って思っちゃうのかな。

――ファンが予想した以上に走ってくれましたね。

岩崎 いいキャンターでしたね。やっぱり馬の気持ちが本馬場に入ってあれだけ変わるっていうのは凄いなって思ったし、ノリが一番びっくりしたんじゃない。一番楽しんだのもノリだろうし(笑)
 今まででああいう形で本馬場で入って乗ったってのはあまり例がないでしょ。

――そうですね。たぶん初めてじゃないでしょうか。

岩崎 二番煎じにならないようにってやったんだから、たぶんノリが第1号だよって本人言ったんですよ。これが現役の種牡馬だったらリスクがあってなかなか難しいかったけど、ライアンは保険に入れる年齢でもないし、うちの馬匹車で連れて行きますからって、乗馬を連れて行くような感じだったから、その点でJRAも気が楽だったんでしょうね。
 ノリが言うにはタレント呼んでお客さんに見せるよりは、こういった馬のことでお客さん呼んだほうが本当にファンが喜ぶし、他にもこういった企画でもっとお客さんが喜ぶものって絶対あるはずだって、その通りだよなって話をしたんです。そしてまた考えようなって(笑)

――期待しています(笑)本当にたくさんのファンが集まってくれましたし、雨が降っていなかったらもっと入っていたんじゃないですか。

岩崎 そう思いますね。台風で土曜日開催ないんじゃないかって言われてて、そんなときにコルセアが勝つのもなんか出来レースみたいで(笑)

――自分も正直まさかと思ってました(笑)

岩崎 それもすごい勝ち方だったでしょう。

――コルセアは道悪ダメなんじゃないかなと思ってたんですが

岩崎 ですよ、逆ですもんね。藤岡祐介もいやー走りますねーなんて(笑)

――今週の札幌記念も雨が降ればでしょうか(※結局は回避)

岩崎 あの馬はG2で定量戦では厳しいんじゃないかな。距離も短いし無理に使わないでハンデ戦の長いところを探したほうがいい気がしますけどね。ユメノシルシで勝って洋吉さんが強気になってるんじゃないかって思ってます(笑)

ありがとう。そして新しい10年へ メジロ通信10周年記念