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メジロ牧場 岩崎専務ロングインタビュー(2)

――ここ1、2年で新しい繁殖牝馬が入っていますが

岩崎 今はノーザンファームの繁殖セールやってないじゃないですか。そこでノーザンさんに私が好きなトニービンの肌とかそれからヌレイエフの流れで出す予定の繁殖牝馬がいたら、是非お願いしますって頼んでおいたんですよね。

広い放牧地で草をはむ母馬と当歳

――社台グループ系だったというのは

岩崎 うちだけの繁殖にこだわり過ぎてもいけないし、外国に行って繁殖を導入したって、ずいぶん入れたけど本当に当たるのって少ないじゃないですか。うちもそんなに景気がいいわけじゃないから、そんなリスクを負ってまで輸入するなら、手近なところで頼んで少し血を入れてみようってことになったんですよ。
 ノーザンファーム代表の吉田勝巳さんとは同級生なんですよ。二人ともずっと高校時代から馬術部に入っていて、僕は日大の付属で彼は慶応の付属で、大学もそのまんま、馬術のときは敵だけど、それ以外のときはすごく仲が良かったんですよ。ずっとそれからもお付き合いさせてもらっていて、またいろんな形でお世話になって、社台グループのシンジゲートはすべて入ってるでしょ。思えばそれこそ第1号のニチドウアラシからの付き合いなんです。だから全部つきあってるんです。おかげでサンデーも入れたわけですね。ディープインパクトもキングカメハメハもみんな入れてるんです。そういう関係もあってノーザンさんから繁殖牝馬を入れることになったんです。

――これまではメジロ牧場の牝系を大切にして残してわけですが

岩崎 うん、そういう気持ちもあったんだけど、こういうご時世になってね。極端に言うと父内国産手当てもない、距離増しも芝の特別でしかない、それからレースそのものが短いほうが主流になっている。うちの牧場みたいなのは出るレースがなくなるし、長くは走るけど、デビューも遅い。それで未勝利が終わるのが早い。

――となると今の主流を追い求めるということになるんでしょうか

岩崎 うん、未勝利がどんどん前倒しになっていずれは札幌の第1回で終わり、そして第2回の函館で終わりとだんだん早くなっていくかもしれない。というのもセレクトセールって日本競走馬協会がやってるセリがありますよね。その中で当歳セリが非常に活況なもんで、あれに出すために今は種付出産がすべて早くなっているですよ。

――最近は1月、2月生まれというのもいますよね

岩崎 うちの牧場もそれに準じてすべてを早く進めているんです。だから、馴致ももう1組終わっているし、今は担当者しか乗ってないんだけど、普通に明日から馬場で乗り始める。すべてが前倒しで早いじゃないですか。うちの牧場の血統じゃ重過ぎるんですよね。だからやっぱり素軽いところも、例えばサクラバクシンオーなどの短いところも積極的に付けなきゃいけないし、そのためにはそれなりの繁殖がいるから、あまり自分のところに固執してたら、時代遅れで取り残されてしまう。
 例えばメジロマックイーンのオーロラの血統だけど、男馬は結構みんな走るけど、女馬はまったく走らない。ツルギだってノーザンテーストの肌でいろんな種牡馬つけてもダメで、リアルシャダイをつけたコサックもそれなりのをつけてもみんなダメ。だから結局これで未勝利のオーロラの肌を置いておくかっていうと、置いてけないですよね。

――確かにツルギやコサックの仔は1頭も勝てませんね

岩崎 だから血が途切れてしまうのは残念だけど、もう切ってくものは切っていくしかないんですよ。繁殖の頭数そのものは変えていないんだけど、その分やっぱり配合は思い切って短距離馬をどんどん作っていくし、1200の馬を作っていく。でも、従来のように長いところ、天皇賞を目指すっていう気持ちは決して忘れてはいない。それも残しておきながら、全部が天皇賞目指す馬っていうことは止めようと、やっぱり半分くらいはそれで、もう半分は今の時代や流れにそって、賞金稼ぎが出来る馬にしようって。なんだかんだ言っても夢だけ追って牧場つぶすわけにはいかないから、安定経営あっての、夢の持続ですから。やっぱり安定が今一番考えていることですね。
 これだけ従業員もいますから社会的な責任もありますしね。そういう面で夢だけを追うだけのための配合はできないんです。

――安定経営という中で夢も守って行きたいということでしたが、今のメジロ牧場の夢は具体的にあるんですか

岩崎 やっぱり夢というか先代オーナーの遺言でもあるマックイーンの天皇賞4代制覇。これがもうあと2世代、後がないけども、最後まで希望を捨てないでやっていかなきゃいけないと思います。あと残ってるダービーと皐月賞、今はG1一杯できてますけど、クラシックレースという意味でこの2つを勝たないと北野ミヤさんに申し訳ないと思うんです。で、先代の豊吉さんにはマックイーンの産駒で4代と。そして、次にくるのがラモーヌで失敗したから、ドーベルの仔でなんとかしたい。ノーザンさんにしても社台さんにしても、なんでG1馬からまたすぐG1馬が出てくるか。なぜうちはダメなのか(笑)

――ちょど今月の優駿にドーベルがディープインパクトを受胎したという記事が掲載されていました。2歳はいませんから、今の1歳は期待できそうですか

岩崎 ええ、1歳はかなりいいんじゃないでしょうか。

――新しく入った繁殖で期待しているのはありますか

岩崎 スターアミュレットはいいですね。これはヴィーナスと交換したんですよ。ヴィーナスはディッシュの仔で女の子ばっかりでしょ。それで向こうの社台コーポレーションさんのほうはステイゴールドの血統が牝馬ばっかりだから、じゃ交換しようかって交換したんですよ。ドラッケンは函館まで入厩したんですけど、寝違えちゃって牧場に戻されてるんですよ。

――先ほどトニービンが好きだって話がありましたが、となるとヴィーナスはちょっと残念でしたね

岩崎 そうなんですよね。ビクトリアとヴィーナスどっちにするか迷ってて、結局洋吉さんに選んでもらったんです。どっちを出しますかって聞いたら、うーんって言ってね、ビクトリア残したいって言ったんですよ。

――ならビクトリアには頑張ってもらわなきゃいけないですね(笑)

岩崎 そうなんですよ

――ヴィーナスの産駒であるアルタイスが先日勝ちましたしね

岩崎 そうなんですよね、あれも簡単に勝ってくれると思ってたのにね・・・。

――ビクトリアの産駒はまだ勝ち星をあげていませんが、初産駒のジオムビーもデビューのときはすぐ勝てそうな雰囲気でしたが

岩崎 そう、ジオムビーもいいもの持ってたんだよね。すぐ勝てるって言われてたんですよ。今、道営にいるんですけど、球節が怖くて使えないんだって。

――全弟となりますが、ティモンは大丈夫でしょうか

岩崎 うん、そういう面では全く心配はないですね。

――トニービンが好きだという話がありましたが、どういったところが気に入っているんですか

岩崎 体形ですね。それから血統的に長距離もつじゃないですか。あとトニービンって意外とみんな繁殖になると馬が形がいいんですよ。種牡馬としたらあんまり形は良くないんだけど、繁殖に入って出た子供は形やバランスがいいんですよ。それでやっぱりスタミナが非常にもつ血統。そういうことでトニービンが好きなんですね。
 確かにノーザンテーストもいいんですけども、それとは一味違う。ノーザンテーストはどれでもみんな平均でいいじゃないですか。トニービンはちょっと相手を選ぶんですよね。ダメなものは全然ダメだけど、良いのが出るとすごく良くて、本当にバランスがとれた馬が出来るんです。それで距離がもつからね。うちの牧場なんかの配合に合うような気がするんですよね。

ありがとう。そして新しい10年へ メジロ通信10周年記念